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旧作書架

右か左か

 常に二者択一を迫る迷宮へ迷い込んで、早くも五日が経過しようとしていた。

 景色を遮る途方もなく高い壁によって外界と区切られた通路は依然としてまっすぐに続いており、よくあるラビリンスのように方向感覚を喪失させるような道のうねりはない、しかしこれほど果てしなく直線に前進し続けると、かえって自分がどの地点を歩いているかわからなくなる。

『落下する鳥と溺れている金魚、どちらを助けますか?』

 立て看板に書かれた問いは大体がこのような調子で、日常生活において聞かれた覚えもなく、そのうえ、こちらの答えを聞いて何になるのだというものばかりだった。

 これまでと同じように努めて深く考えることはせずに、質問の書かれた看板の右脇を通り抜け、床に置かれていた金魚鉢を抱えて再び進む、背後で何かが潰れたような異音の直後、ぱっと風に乗って羽毛が飛んできた、一本道の迷宮はまだ果てが見えない、鉢の水が重く思えて選んだ金魚も早々に手放した、後ろを振り返る気にはなれない、道中には自分が手に入れられなかったもの、手放したものばかりが目につく、進む方向だけを見つめるのに必死になった、一本道の先には次の選択が待ち構えている。